生涯を通して健康的な生活を送るための家庭科教育における栄養教育カリキュラムを開発するためには、子どもたちが日常生活を通して栄養や健康に関する知識をどの程度獲得しているのか、また家庭科教育における学習の結果、どの程度の知識が獲得されているのかを明らかにすることが必要である。そのために、中学校家庭科学習者と未学習者を対象に、質問紙法により調査を行った。調査内容は、栄養、食品、献立、調理、食事の取り方、食事の役割に関する33項目である。 その結果、次の点を明らかにした。1.学習者・未学習者ともに正答率が高かった項目は「骨や歯を作るもとになる栄養素」で、正答率は90%以上であった。このような内容については、日常生活や小学校での学習を通して知識を身につけていることが推察でき、中学校においてはより発展的な学習指導を行う必要がある。2.学習者・未学習者ともに正答率が低かった項目は「1日に摂取する食品量のめやす」「ビタミンCを多く含む食品」などの項目で、学習の成果が十分認められず、また、日常生活を通して知識を獲得することもないことが示された。このような内容については、基礎・基本に重点をおいて指導するなど学習指導方法の工夫が必要である。3.学習者・未学習者の間で大きな差がみられた項目は「栄養素のはたらき」「栄養所要量」「食品の栄養的特質」「調理の科学」などの項目で、これらの内容は家庭科の授業を通して知識が獲得されており、学習の成果が認められた。4.生活経験と知識獲得との関連を検討したところ、「調理技能」「安全・衛生」などの項目については、生活経験のちがいが知識の獲得状況に大きな影響を及ぼしており、これらの内容については、生活経験と教科学習を結びつけた学習指導が必要である。
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