研究概要 |
高齢者の夜間における視覚生活をサポートする色彩視環境の整備を目的とする.平成16年度は光環境可変型検査装置を用いて高齢被験者による立体刺激の視認性実験を行ない,明所および暗所における色の視覚効果ならびに視覚性能について検討した.なお,立体刺激の形状計測は非接触3次元デジタイザーを用いて光切断法で行なった. 夜間における視知覚情報に関する一連の実験のために作製した光環境可変型検査装置を使用した.本装置は調光可能な光源と移動棹指標を有しており,視野角は10°で指標移動距離は800mm,指標位置を1mm単位で測定できる.光源はPCインバータ内臓の自然色型蛍光灯(昼光色:DL)および高演色性蛍光灯(電球色:HS)を使用した.刺激は立体(立方体,円柱,円錐,四角錐)および人形(土製の福助人形)など5種類を用いた.立体の視認性実験ではJIS安全色彩に近似の赤(7.52R 4.00/11.15),黄(2.53Y 8.00/13.79),青(2.48PB 3.51/7.99)に調色した色紙により立体を被覆し,刺激とした.後期高齢者を被験者とする視認性実験は光源の性質,調光レベル,刺激の形状,色彩の影響などの複合条件の下で行なった.被験者は前進する移動刺激が固定されている基準刺激と同じ位置に到達したと認識した際に応答する.同時に刺激の移動を停止し,刺激間の前後距離を測定した. 円柱および円錐で優れた視覚性能が得られた.特に円柱,昼光色,明所,赤が基準刺激で黄が移動刺激の場合(Column, DL, Bright,[R]/Y)には,いずれの被験者においても良好な視覚性能を示した.一方,立方体,電球色,暗所,両刺激とも黄(Cube, HS, Gloom,[Y]/Y)ならびに円柱,電球色,暗所,両刺激とも青(Column, HS, Gloom,[B]/B)の場合は視覚性能が低下する傾向が認められた. 高齢者の夜間における安全な色彩視環境に有効な色彩は赤,黄であること,さらに組み合わせる立体形状としては円柱と円錐の視覚性能が高いことなどを示唆した.
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