現在、衣料上の化学物質(反応染料、仕上げ加工剤、残留洗剤など)が原因となる接触皮膚炎が多く発症しており、なかには職業病として認定されているものもある。しかし、これまで繊維の接触皮膚障害に関する基礎研究はほとんど行われてない。われわれは、近年、細胞培養技術の進歩によって作り出された正常ヒト細胞を用いた3次元培養皮膚モデルを使って、(1)衣料品に関わる接触皮膚障害原因物質のヒト皮膚への反応に関する詳細なデータの蓄積を計り、(2)皮膚刺激性物質と皮膚障害の関係を明らかすることで、衣料における安全性確認の手法を確立することを目的として研究を行っている。 現在、培養皮膚を用いた皮膚一次刺激性試験法のJIS化が進んでいる。その方法に準じて、皮膚毒性が知られているカチオン界面活性剤の皮膚刺激性を3次元培養皮膚モデルを用いて検討した。その結果、カチオン性界面活性剤の濃度に比例して、その刺激性が認められ、このJISに基づいた試験法は有効であることが推定された。また、市販洗剤や加工剤の皮膚刺激性も検討した結果、その添加濃度に依存して皮膚刺激性が認められた。しかしながら、JIS化の進んでいるこの手法の細かい点でそれぞれの刺激物性に応じたマニュアルの検討が必要であることも明らかとなった。現在、刺激物の添加の仕方やその添加量、水溶性でない刺激物の評価法などの検討を行っているところである。その後、従来からのバッチテストとの対応を検討する予定である。
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