研究概要 |
研究全体の目的は,各地(とりわけ,温暖湿潤な九州・四国・瀬戸内地方)に蓄積されてきた気候風土に根ざした住生活力(住生活習慣・住居管理法など)の実態を収集・記録保存し,次世代に受け継ぐために世代間交流の手だてを検討することであるが,本年度は住生活力の記録保存と,世代間交流の手だてを研究するための住教育・生涯学習の一環としての住まい学習実践を行った。 具体的には,(1)住生活力の実態調査(アンケート調査),(2)高度経済成長期以前からの『婦人之友』・「大分合同新聞」にみる住生活力の実態調査,(3)家庭科教員を対象に気候風土に根ざした住生活力の実態および学校教育(家庭科教育)の実態に関する調査(ヒアリング調査)を実施し,ペーパークラフトを活用した住教育・伝統空間体験学習を実践した。 その結果,以下の4点が明らかになった。1.住生活力は,地域の違いもあるが世代間の差が大きい。2.家庭科教育のなかでも「住」の領域は「教員にとっても難しく」十分には学習されていない。3.しかし,家庭科教員は,住生活力育成の意義を痛感しており,実生活では積極的に自然に働きかけて生活している実践者であり,手だてを研究すれば,伝承者として力を発揮できる。4.文献にみる住生活習慣・住居管理法を「気候風土に根ざしている」「伝統文化を大切にしている」「コミュニティ形成に資する」「科学的な発見があり子どもが関心をもてる」「機械に頼りすぎない」「有害な化学薬品を多用しない」の視点で整理した結果,次世代に伝承すべき「暑さをやわらげる住まい方」「寒さをやわらげる住まい方」「清掃法」「DIY」などが抽出できた。 また,ペーパークラフトを活用した学習教材や伝統空間体験学習などの実践が蓄積できた。
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