研究課題/領域番号 |
15500520
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小伊藤 亜希子 (坂東 亜希子) 大阪市立大学, 大学院・生活科学研究科, 助教授 (90257840)
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研究分担者 |
室崎 生子 平安女学院大学, 生活環境学科, 教授 (90089128)
清水 肇 琉球大学, 工学部, 助教授 (40244280)
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キーワード | 子ども / 共働き家庭 / 家庭生活 / 学童保育所 / 地蔵盆 / 子育て力 |
研究概要 |
16年度は、主に以下の二つの調査を実施した。 1)共働き家庭における子どもの家庭生活の実態調査を、大阪市、及び神戸市の民設型学童保育所に通う子どもたちを対象に実施した。その結果、(1)親の労働条件が厳しくなる中、学童保育の時間延長が強く求められている一方で、大阪市のように保育時間が長い場合、帰宅後の子どもの生活には時間的余裕がなく、学童保育でゆったり過ごせる自由時間と空間を保障する必要があること、(2)夕食を家族揃って食べる頻度は、週2日以下が半数を占めており、共働き家庭のそれは一般家庭に比べても少ないこと、(3)夫婦の家事分担を類型化した結果、母負担型が最も多い一方で、協同型も現れており、家事育児を夫婦で分担することで仕事と家庭生活の両立を図っている新しいライフスタイルが定着してきていること、(4)居住地選択の段階から、祖父母の育児支援を前提にしている世帯が多く存在し、共働き子育て家庭の生活が祖父母の育児支援に大きく依存して成立していること、(5)父母会運営の民設型学童では、学童保育を通じた父母のつながりが強く、学童保育が子育てネットワークの拠点となっていること、が明らかになった。 2)京都市と石川県加賀市において、子どもを中心とした地域の伝統行事である地蔵盆を取り上げ、その実施状況及び子どもの発達環境という視点から地域の子育て力について考察した。京都市の地蔵盆は、子どもだけの行事というよりお町内全体で伝統を守ることが重視される傾向が強く、子どもがほとんどいなくなった町内でも大人だけで行われている。近年共同住宅が急増するなか、共同住宅に住む子どもの参加には町内によって差があるものの、共同住宅居住者の地域参加促進において地蔵盆の果たす役割が期待される。一方加賀市では、伝統的に子どもだけで地蔵盆を運営してきた歴史があるが、近年、子ども主体型から大人補助型、さらに大人主導型に移行している集落が増えており、それに伴い地蔵盆の拠点空間も「やぐら」からテントに替わるなど変化し、また子ども同士の異年齢集団の関係も希薄になっていることがわかった。しかし日常生活における子どもたちの遊びや遊び集団が限定的になる中で、地蔵盆は異年齢の子どもたちが協同でものごとに取り組み、地域を認識する貴重な機会を提供している。今後は大人が必要な補助をしながらも子どもの主体性を重視した形で地蔵盆を運営していく必要があり、そのことが地域の子育て力を培うことにつながることを提言した。
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