本研究では、肩部が衣服の支持帯であり、この部分の形態適合の良否が着心地の良否に大きく関わることから、三次元計測データを用いて肩部立体形状に焦点を当て、形状把握と類型化手法の確立及び類型化を目的とした。 まず使用する非接触三次元計測装置の最適撮影条件と精度を確かめるために、3つの実験を行い、最適なカメラの高さと角度を明らかにし、三次元データの精度がよいことを確認した。しかし回転台を使う場合は人体の動揺に対する注意が必要であることが指摘された。次いで2004年11〜12月に女子大生ボランティア63名の三次元撮影を行った。得られた肩部の三次元画像と三次元座標値から算出された19項目を用いて肩部形状の把握を試み、平均的形状や個人差について検討した.次に11項目による主成分分析から肩部形状を表す要因の抽出を試み、得られた主成分得点のクラスター分析から肩部形状の類型化を試みた。 その結果、肩部形状は多様な形状をしていること、肩部及び頸部に関わる寸法は個人差が大きいこと、肩部の前湾の程度と肩傾斜角との関連、頸部左右長と頸部前後長との関連は無相関に近く、両者は独立の関係にあることが明らかとなった。主成分分析の結果、肩部の大きさと肩部前湾の程度を表す成分、肩部と頸部の傾斜と前胴部の丸みを表す成分、前面の幅と頸部の幅を表す成分の3つの主成分が抽出された。次にこの3主成分得点を用いてクラスター分析を行い肩部立体形状の類型化を試みた結果、4つのクラスターに分類された。しかし第4クラスターは2例に過ぎなかったので、残る3つのクラスターについて解釈を試みた。類型1は、肩の幅が広く厚み力弐あり、背面、前面の幅も広く、やや前肩傾向であるが標準に近い体型である。類型2はいかり肩で頸傾斜角が小さく胸のふくらみの大きな反身傾向の体型である。類型3は相対的に肩の幅と厚み力弐小さく、背幅が狭く、肩が後方に位置する体型となった。
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