研究概要 |
平成15,16年度((1),(2)年度)の新潟県中越豪雪地域における要介護高齢者の、「越冬入院」問題について、環境的、社会的要因を総合的に解析した結果、「寒さ」そのものの理由以外に、デイケアに送り出す際の戸外(玄関前)の積雪排除の労、採暖措置の手間等家族介護者の負担感によるものが無視できないことが分った。そこで年間を通じて寒冷が常態の東北、北海道地方なら住居内外の諸対策が充実しており、越冬入院の意味合いも異なると考えられることから、17年度はフィールドとして北海道の2地域(道中央部の寒冷農村地域の本別町と札幌郊外ベッドタウンの北広島市)を選定し、それぞれの地域における越冬入院状況並びに入院、非入院介護高齢者宅の住居内温湿度の実態について調査した。 両地域とも越冬入院者の比率は、1%以下と新潟の場合より有意に低めで、そのうち住居内の「寒さ」を主たる理由に挙げるものも3割程度見られたものの、絶対数としては少なかった。 結局北海道では年間を通じて要介護高齢者の施設入り(入院)の必要性が問われる傾向が見られ、冬季、非冬季の区分は低位の条件となっているに過ぎないことが読みとれた。 本研究の更なる遂行のためには、より広範な調査地域の選定が必要であるが、これまでの限られた調査からしても、一見「寒さ」によると見られる越冬入院現象が、狭義の住居内温熱環境のみに由来するとの見解は不正確と言わねばならず、その回避のためには、暖かさ、公的私的介護支援の容易さ、バリアフリー等を含む総合的な、快適住環境の造設が不可欠であることが判明した。
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