研究課題
基盤研究(C)
本研究は、寒冷地の冬季にみられる社会的入院、いわゆる「越冬入院」(老人保健施設への入所を含む)について、その居住環境要因を検討し、寒冷地の在宅ケア環境改善の基本方針を得ることを目的とする。このために、新潟県南魚沼市の介護保険居宅サービス利用者を主対象とし、北海道本別町、北広島市を比較地域として、「越冬入院」の出現状況、冬季の在宅生活および屋内温湿度の実態解明を課題とした。調査の流れは以下のとおりである。(1)主対象地区の介護支援専門員が回答する「越冬入院」の概要調査、(2)南魚沼市の「越冬入院」と冬季も居宅介護を継続する「通年在宅」の2群についての詳細調査(生活実態と屋内温湿度測定)(3)南魚沼市の介護度の軽い「通年在宅」群の詳細調査(4)北海道本別町、北広島市の「通年在宅」群の詳細調査南魚沼市の居宅サービス利用者で、次の冬季に越冬入院が予測されたものは3.6%、その半数が「屋内の寒さ」を主な理由とし、これらの大半は介護度の重い事例であった。介護度の重い居宅サービス利用者がもともと少ない北海道本別町、北広島市において、「越冬入院」が予測される事例は1%前後で、これらは軽介護度の単身者等の事例であった。南魚沼市の「越冬入院」、「通年在宅」の両者間で、生活状況や住宅の実態、屋内温度では大きな相違は存在せず、総じて屋内(とくに廊下)の寒さ、排泄ケア時などの苦労が認められた。一方、北海道本別町、北広島市の「通年在宅」事例では、築20年程度以下の住宅群とその他の住宅群で、相違が明確で、前者では外気温の相対的に高い南魚沼市の事例に比較して、居室、廊下ともに暖かさを維持していた。暖房機器が十分に整っていない地域では、「越冬入院」という現象も散見されるが、それはその事例の物理的居住環境に見られる特徴ではなく、その地域に共通する介護上の問題をもたらしている。いわゆるバリアフリーの視点で住環境整備がなされているが、その際に暖房環境の視点も加えた検討が必要であり、さらには新築時の住宅計画にそれが反映されることが望まれる。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (8件)
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