研究課題
基盤研究(C)
本研究は、有害な紫外線から肌を守ることを目的として、布と染料の特性が紫外線遮蔽性能に及ぼす影響について検討した。布上の染料は光エネルギーを吸収しやすいほど布を透過する光量を減少させ、皮膚への紫外線曝露を減少することが出来る。しかし、一方、染色布の退光堅牢度の問題が発生する。平成15年度は布上の染料の光退色と紫外線遮蔽性能の関係について検討した。結果は次の通りである。1)遮蔽率90%以上を有する濃色染色布では、光退色によって視感反射率Y%はやや高くなっても、ほとんど遮蔽率に影響を受けない。2)UPF(紫外線防護係数)は紫外線遮蔽率90%以上で著しく増加する。そのため、光曝露による退色は、遮蔽率の変化に比べ、UPFでの変化は大きい。3)染色布を透過した光は染色布に添付したブルースケールを退色させ、退色の程度は染色布の遮光性の目安になる。遮光性は白布より染色布が、分散染料・ポリエステル染色布より直接染料・綿染色布の方が高い。また、今まで染色布の紫外線遮蔽性能を綿・直接染料、ポリエステル・分散染料で論じてきたが、繊維の影響か、染料の影響か明らかではない。平成16年度は繊維基質の違いが紫外線遮蔽性能に及ぼす影響について検討した。布のモデルとして糸の太さ、糸密度、布構造などの布のファクターを除いたセルロースフィルムとポリエステルフィルムを用いた。よく似た赤の色相のDirect Red23とDisperse Red1を用いて、染料とフィルムの基質をUVA、UVBの透過率、UPFから調べた。結果は次の通りである。1)未染色ポリエステルフィルムの紫外線遮蔽率は紫外線領域、特にUVBで優れている。2)ポリエステルフィルムは染色によりUVAでの紫外線遮蔽率を向上させる。3)セルロースフィルムの紫外線遮蔽率は染色によりUVA、UVBとも非常に向上した。4)フィルムの重ね枚数が増すにつれ紫外線遮蔽率よりUPFの向上が明らかになった。
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