研究概要 |
今回の研究では,従来の泡沫系の応用のように,単に泡沫化によるかさ高化のみを目的とするのではなく,泡沫ひいては泡膜を積極的に移動させることで,かくはん等の物理的作用を発生させ,これを応用する点に特色がある.また,これまでの研究により,このかくはん効果は,繊維製品等の柔軟な素材にも損傷を与えないなど有用性が見込まれている.さらに,泡膜やPlateau境界内部のセミミクロな液流に着目し,なおかつ高速度ビデオ画像の画像処理によりこの液流を解析する試みは,本研究の独創的かつ先駆的な点といえる. 本年度は泡膜内部,特にPlateau境界部における液流の速度を測定するための実験設備を構築した.起泡部においては,エアーポンプを用いエアータンク内に圧搾した空気をマスフローコントローラを介し,梨形パラブルフラスコ内に貯留した界面活性剤溶液に連続的に送り込み気泡を形成する,これをガラス管で観察部に導入するが,観察用のセルとしては光学セルの底部を切除しパイプ状にしたものを用い,これを顕微鏡のステージ上にセットする.この顕微鏡装置には高速度ビデオカメラを設置し,通常の条件下ではきわめて観察困難な高速(250 s-1)の液流の観察を可能とする.なお,観察後の泡沫は,ガラス管等でトラップへ誘導し,ここで消泡する.基本的には界面活性剤溶液で泡膜を形成するため,無色透明の泡膜が観察対象となるが,ここでは微小なlatex粒子(ψ=11.14 μm)のdetectorを使用し,その動きを液流とみなして液流の解析を行った. 結果としては,泡膜が移動する速度よりも泡膜内(Plateau境界内)の実際の速度は速いこと,特に泡膜の移動方向に垂直方向すなわちPlateau境界の長さ方向に非常に速い液流を認めた.
|