研究概要 |
初年度の研究では、まず(1)生涯生計費に関する先行研究から本研究の意義(ライフコース別に生涯生計費をシミュレーションすること)を明らかにした。また少子高齢社会におけるライフコース別(大卒7コース)の収入データ(実収入、可処分所得)を提示するとともに、生涯収入という視点からライフコース選択の経済的課題についても明らかにした(平成15年8月家庭経済学部会夏期セミナー報告(田崎裕美))、さらに,学歴・子の有無・世帯類型や職業とのかかわりから、妻の再就職コースと短卒の場合を加え16のライフコースを設定、従来の標準労働者モデルに基づく賃金体系のもとで生涯収入(実収入と可処分所得)の試算(男性77歳,女性84歳まで)を行い、ライフコース別の生涯収入を明らかにした(「生涯でみた収入」(田崎裕美)) 次に生涯支出については、以下の視点(項目)からライフコース別のシミュレーションをおこなった。1)「生殖補助医療(ART:不妊治療)による妊娠」(鈴木真由子)では,経済的犠牲(費用と逸失利益)・身体的犠牲(副作用やリスク)や精神的犠牲(プレッシャーやバーンアウト)をみた上で,初診から3年半で妊娠するまでに費用は、250〜380万円と推計した。2)「住宅計画と費用」(中川英子)では、10例のライフコースについて住宅計画と費用を推計、その結果、居住水準、生涯住居費、生涯住居費の割合は、各ライフコースにより大きく異なることを具体的な数字から明らかにした。3)「高齢期の住まい方と介護費用」(高橋桂子)では,高齢期の経済状況を概観したうえで,介護状態発生を前提に,3例のライフコースについて居住用不動産の活用がどの程度,経済的に豊かさを実現できるか明らかにした。3)「生涯でみた無償労働の推計」(草野篤子)では,無償労働の推計にあたり男性の平均賃金を用いて生涯無償労働を推計し、その結果,女性は性別や学歴により不当に低い評価がなされている事実がいっそう明確になった。 以上
|