研究概要 |
要介護者が残存能力を生かし自立した日常生活ができるように,国民の保険医療の向上と福祉の増進を図ることを目的として介護保険制度が導入された.居宅介護では,身体介護に比べ生活援助の需要が高い.しかし,介護の現場では介護福祉士の生活援助の質が悪いとの批判が多い.その一因として,介護福祉士養成施設の家政系科目の授業内容が介護の現場に即した専門性に欠けるものであることが考えられた.利用者の要介護度に対応した生活の自立支援ができる介護福祉士を養成するために,家政系科目の授業内容と授業方法について検討した. 研究方法として,(1)介護者の仕事内容と現行の家政系科目の授業内容との関連性を検討するために,居宅介護に於けるホームヘルパーや介護福祉士の観察調査を実施した.(2)学生の学力と教育効果を把握するために,居宅介護実習前に観察調査から得られた結果を基に生活援助に関する事前演習を行い,学生の不安や達成度に対するアンケート調査を実施した.(3)生活援助実例を知ることが大切なことから文献による実例調査を行った.(4)家政系科目で履修した内容の介護現場での有効性を検討するため,本学の卒業生を対象にアンケート調査を実施した. その結果,(1)居宅介護の現場調査からは,現行の家政系授業科目にない内容,利用者理解のための広範囲の知識,マナー,気働きや介護系科目・他科目との連携が必要なことが明らかになり,家政系科目を担当する教員も現場を知って教える重要性を再確認した.(2)生活経験の少ない学生にとり,現場を想定した演習形式の授業が有効であることが明らかになった.(3)生活援助実例を記載した文献は少なかった.(4)現行の授業内容の有効性に関する調査では,過半数が役立っていると回答した内容は約5割であった.以上のことより,質の高い生活援助のために介護現場に即した家政系科目の授業内容と教育効果のある授業の実践が必要なことが考えられた.
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