1.食物や栄養が健康や病気へ与える影響を過大に信じたり評価することをフードファディズム(Food Faddism)という。評価が過大であるか適正であるかを判断することは難しく、過小評価もまた問題ではあるが、身体への好影響や悪影響を極端に言い立てる論である。複数のテレビ局が放映する、健康を主たるテーマとする惰報娯楽番組(「健康情報娯楽番組」とする)は「食」を話題とすることが非常に多い。これらが取りあげる食の情報にはフードファディズムとみなされるものが多数あることを確認した。 一例として日本テレビの健康情報娯楽番組「思いッきりテレビ」が2004年3月8日に放映した「怖い糖尿病にならないために」と題する特集を示す。この特集では糖尿病に対する正しい理解を深めるよりも「ある食品を食べたり、体を少々動かせば防げるもの」という誤った印象を与える構成になっており、さらには虚偽も含まれていた。すなわち「学術誌Diabetes Care2003年12月号食事に少量のシナモンを加えることで糖尿病患者の血糖値や血中脂肪を18%下げた」との情報を話題にしたが、該当文献を調べたところ、2型糖尿病患者に1g、3gまた6gのシナモンを食後にカプセルで40日間にわたり摂取した結果であった。シナモンはスパイスであり、一度の使用量は多くても50mgでしかない。「食後に大量のシナモンを飲ませることで・・・」が真実であるにもかかわらず、少量のシナモンに効果があるかのような放映内容であった。 2.講演会および実習型食生活教室に参加者に対し面接聴取を行ったところ、マスメディアからの食情報が「ふつうに食べる」ことを伝える地道な食生活教育を軽視させている実態が報告された。 3.食事指導に関与する栄養士・管理栄養士と食情報検討会を継続的に行い、マスメディアからのフードファディズム的食情報に少なからず影響され、それが指導・教育に反映されてしまうことが確認された。
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