最近では、外食や中食などのかたちで、さまざまな調理ずみ食品、半調理ずみ食品が日常食の一端として広く使われるようになっている。これらの家庭外で調理された食品については、栄養バランスの悪さや添加物の多使用とともに、呈味の画一化と濃厚化が問題点として指摘されている。本研究は、家庭外で調理された食品の呈味の実態を化学分析を通して明らかにする一方、これら食品の利用の実態と意識を調査紙調査により、またこれら食品への嗜好・味覚をを官能検査によって調査し、これらの実態を把握するとともに、食生活のありかたと味覚・嗜好の現状の関連をみることを目的とするものである。 今年度は、漬け物のうち、たくわんおよび梅干しを選び、各種の市販品と手作り品について、その呈味の特徴を明らかにするために、塩分濃度、糖度、グルタミン酸量、有機酸量の分析を行なった。 最近では、各種の調味をほどこした漬け物が広く市販されている。漬け工程も簡略化されているものが多いと言われる。たくわん、梅干しともに、原料から伝統的な方法で漬けた手作りのものと、各種市販品を比較検討した。なお、手作り品では漬け工程中の呈味成分の伸長もみた。 伝統的な漬け方をした品では、漬け工程中に呈味成分の増減がみられ、独特の風味の形成が確認できた。たくわん、梅干しともに、手作り品の塩分濃度が高かった。たくわんでは、糖度もグルタミン酸量も一般に手作り品で高かったが、一部市販品ではグルタミン酸が多量に添加されていた。梅干しでは手作り品で糖度が高く、有機酸量も高かった。市販品では、漬け工程中に生成する呈味が少なく、調味によりそれを補っているものと考えられた。梅干し手作り品と市販品との比較官能検査では、圧倒的に市販品が好まれた。市販品の味を食べ慣れた味と表現する人が多かった。
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