アブラナ科野菜とネギ属野菜の加熱調理後における生理機能の変化を化学的に研究した結果、アブラナ科野菜ではイソチシアネート類の分解や酵素ミロシナーゼの失活により、第二相解毒酵素(グルタチオンS-トランスフェラーゼ;GST)誘導能の著しい低下が認められた。一方、ネギ属野菜の高温調理またはその製品(例:ニンニクチップや揚げニンニク)に強いGST誘導能とDNA鎖切断活性が認められた。そこで、ニンニクの加熱調理で変化する機能性含硫化合物について化学分析を進めたところ、ジアリルトリスルフィド(DATS)の生成が顕著であった。 そこで、ニンニクの加熱調理により生成するジアリルトリスルフィド(DATS)を含むポリスルフィド類について、第二相解毒酵素(GSTなど)誘導能と、その作用機作を解析した。ニンニク由来のポリスルフィドとして、ジアリル基を有したモノスルフィド(DAS)、ジスルフィド(DADS)、DATSを入手精製または合成した。GST誘導活性の強さは、DATS>>DADS>>DASの順で、特にDATSに顕著な誘導活性が認められた。次に、ポリスルフィド投与後のラット肝由来RL34細胞のレドックス(酸化還元)状態を、DCF蛍光プローブを用いて解析した結果、GST誘導活性と同じ順序で細胞内の酸化状態が起こっていた。アブラナ科野菜中のイソチオシアネート類同様、ポリスルフィド類、特にDATSのような硫黄数が3つ以上のポリスルフィドに細胞内酸化ストレス誘導能があることが解明できた。さらに、この反応を解析したところ、グルタチオン(GSH)のような還元性を示すチオール類の存在下で強い活性酸素種の生成が起こることがわかった。この反応には、分子状酸素の存在とGSHの減少、さらにポリスルフィド化する反応(ポリスルフィドーチオール経路)が関与していると考えられた。
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