研究概要 |
循環器疾患の原因である動脈硬化は、血管の老化や血液の流れが悪くなる微小循環障害などによって引き起こされる。近年,植物性食品の機能性成分が、微小循環障害に関連する血液の流動性を高める可能性が注目され始めてきた。そこで、玄米・大豆・野菜を中心とした菜食者と一般的な食生活をしている者を対象に調査し、菜食摂取の健康状態および血液流動性に及ぼす影響を検討した。 「菜食45日間グループ実践」に参加した中高年女性ボランティア19名を対象に、体格・体組成・血液流動性の測定(MC-FAN法)、血液性状、食事調査(陰膳法・フラボノイドの実測)などを行った。 緑黄色野菜,大豆製品の摂取量は、菜食時はコントロールと比べて有意に高値であった。エネルギー摂取量は基礎代謝基準値に近かった。菜食時のイソフラボン摂取量はコントロールの約3倍で,血中濃度もコントロールより有意に高値を示した。ケルセチンの摂取量は,コントロールと差がなかったにもかかわらず,血中濃度は約5倍の高値を示した。 菜食時はコントロールと比べて、ビタミンD・ビタミンB_2・ビタミンB_<12>・亜鉛・セレンの摂取量は有意に低値であったが,レチノール当量・ビタミンK・ビタミンB_6・カルシウム・鉄・マグネシウム・マンガン・フラボノイドの摂取量は有意に高値であった。菜食では,低エネルギー・低タンパク質ではあるが,ビタミン,ミネラル,フラボノイドの摂取量が多いのが大きな特徴であった。菜食摂取時には,体重は減少したが,貧血や低アルブミン血症など低栄養の症状は認められず,健康状態は良好であった。 両群の血圧・血中脂質濃度・アルブミン濃度・血液流動性に有意差はなかった。血液流動性に及ぼす因子の検討を主成分分析,重回帰分析で行なった結果,動物性食品などの高エネルギー食品の過剰摂取による肥満・高血圧・高ヘマトクリット値・高脂血症などは、血液の流動性を低下させることを明らかにした。
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