研究概要 |
魚臭の主成分は、トリメチルアミンなどのアミン類であるとされている。しかし、アミン類のが魚のにおいを決定しているのではない。実際に生成する魚臭にはアミン類以外の成分も多く含まれている。しかも、実際に食卓にのぽる魚料理ではアミン臭は全くなく、他の成分が「魚くさい」においに寄与していると考えられる。本研究は、魚の持つにおい成分について、ガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフー質量分析計などの機器分析法とガスクロマトグラフーオルファクトメトリー(においかぎ)法によるにおい判別法とを用いて、真の魚臭成分の構造や生成量を明らかにするとともに、それらの生成機構、生成条件を解明すること、さらに調理によってこれらを抑制する方法を明らかにすることを目的として遂行した。 試料として、「マイワシ」を用い、新鮮魚、および室温放置により劣化された魚について、固相微量抽出法を用いてにおい成分を吸着させ、ガスクロマトグラフ-質量分析計およびガスクロマトグラフ-オルファクトメトリー(においかぎ)により、におい成分の解析を行った。その結果、魚の劣化過程において、トリメチルアミンは確かに生成するものの、pHを塩基性にしない限り、揮発性が乏しいため、いわゆる「魚臭い」においの原因ではないことを明らかにした。また、においかぎ分析により、多くの非アミン化合物、特に脂質に由来すると考えられるカルボニル化合物等が、不快なにおいを有し、これらが魚臭いにおいの主要な原因物質であることを明らかにし、特に2,3-pentanedione、hexanal、1-penten-3-o1が多く存在することを見いだした。これらはいずれも脂質に由来する化合物と考えられる。従って、抗酸化成分を有する調味料や食素材とともに調理することで、魚臭を抑制することができると考えられる。
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