研究課題
前年度の研究では17種の海藻の抗酸化機能ついて検討し、臭素化合物やポリフェノール類等の特異な抗酸化成分を含む数種海藻では強い抗酸化活性が発現したものの、ほとんどの海藻の抗酸化性はクロロフィル(Chl)類あるいはカロチノイド(Car)類に依存していることが示唆された。しかし、ChlとCarのいずれが抗酸化作用を発現するうえで主体となっているかは不明であった。そこで本年度の研究では、このことを明確にするとともに、分析対象試料を陸生の食用植物まで広げて食用植物の抗酸化能に関して多くの情報を収集した。まず約60種の野菜、果物等の食用植物について脂質酸化防止作用を検討した。その結果、海藻と同様にChl類を豊富に含むホウレンソウなどの緑色野菜はすべて強力な抗酸化活性を示した。しかし、βカロチンやルテインなどのCar類の豊富なニンジン、カボチャ等では強い活性は認められなかった。前年度解明できなかったChlとCarの抗酸化活性を比較・検討するために、各種光合成色素の高速液体クロマトグラフィーによる分離法を検討し、C18逆相カラムとアセトン/メタノール/水を用いたグラジエント溶出法でそれらが明瞭に分離されることを示した。同法を応用して個々の色素成分を分離・回収し、抗酸化活性を調べたところ、Chl aと海藻(コンブなどの褐藻類)特有のChl cに強力な脂質過酸化防止作用があることがわかった。しかし、Chl bならびに海藻およびホウレンソウから調製したβカロチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、フコキサンチンなどのCar類にはいずれも有意な作用がなかった。以上のように、有効な活性酸素消去剤と考えられているCar類は必ずしも強い脂質酸化防止作用をもっておらず、食用植物に普遍的に存在するChl類が極めて有効な抗酸化成分として機能しうることを明らかにした。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
ITE Letters on Batteries, New Technologies & Medicine 5・5
ページ: 483-486