研究概要 |
食品由来の機能性化合物の調理時の動態、含有量を正確に把握し、不安定であれば、安定に供給できる調理法の開発は、食品としてこれらの成分を利用するにあたって大きな貢献をするものと考える。本研究では、まず、トウガラシ辛味関連化合物として、カプサイシンとカプシエイトの食品中からの効率的な抽出方法と、選択的に辛味関連化合物を分析する方法の確立を目指した。ついで、カプシエイトの調理中の安定性ならびに成分変化について詳細に検討した。これらの結果をふまえ、カプシエイトの生理作用を有効に生かす調理方法の開発を試みた。 辛味化合物カプサイシンでの研究では、カプサイシン類似成分を多数含み、もっとも定量が困難と考えられるカレールーからの抽出・定量条件を検討した。10倍量のアセトンで24時間浸漬するとカプサイシンを定量的に回収できた。定量には、HPLCとUV,蛍光,アンペロメトリック電気化学検出を検討した。メタノールの濃度勾配溶出と蛍光検出を組み合わせることで、カレールー抽出物中のカプサイシンの分別定量ができた。さらに、別の主要辛味化合物コショウのピペリンの定量も検討した。励起波長と蛍光波長をピペリンとカプサイシンとで変えることで同時定量が可能であり、市販ルー中の辛味化合物を定量した。 無辛味化合物カプシエイトについては、モデル化合物バニリルノナノエイトVNを酵素法で大量合成し、水系、油系での安定性をまず検討した。強酸性下と油中ではVNは安定であった。つぎに、これらの知見を基に、ドレッシングやマヨネーズ、チョコレート中でのVNの安定性を測定した。抽出・定量法はカプサイシンで確立した方法を用いた。その結果、いずれでも室温放置で1年以上という長い半減期が得られた。
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