研究概要 |
陸上から排出された多種多様の化学物質は直接あるいは間接的に食品や水道水を汚染しており、生体内で直ちに変異原性・発がん性を示すものや、肝臓等で代謝されたのち遺伝毒性を惹起するものがある。従来、個々の変異・発がん物質については次第にデータが蓄積されているが、複合的に作用して毒性を増強あるいは減弱する報告例は極めて少ない。 我々は、加熱食品中に存在するヘテロサイクリックアミンのTrp-P-1(3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido[4,3-b]indole)やMeIQx(2-amino-3,8-dimethyl imidazo[4,5-f]quinoxaline)と水道水に存在するMX(3-chloro-4-dichloromethyl-5-hydroxy-2(5H)-furanone)の共存時における変異原性を、S.typhimurium TA98、TA100、±S9mixを用いるAmes試験および金魚(Carassius auratus)に投与後、抹消血と鰓を用いる染色体異常を指標とした小核試験、抹消血を用いるDNA損傷を指標としたコメットアッセイにより検定した。その結果、Ames試験ではTA98、+S9mixでTrp-P-1やMeIQxがMXとの併用により、強い増強作用を示すことを見い出した。また、MXは鉛塩との間で相乗的に変異原性が上昇した。一方、野菜や果物、茶に含まれるカテキンをはじめとするポリフェノール類を、複合作用がみられた試験系に添加したところ、変異活性が減弱または消失することを確認した。これらin vitroでの実験結果の一部について、金魚を用いたin vivo試験で確認できたことから、さらにマウスあるいはラットを用いて同様の実験を進めており、簡易な複合作用の検定手法の確立とともに、植物を含む食品による抑制効果の評価法としての応用を検討している。
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