二級アミンは酸性条件下で亜硝酸塩が共存すると容易にニトロソ化化合物を生成する。両者は食品成分として、あるいは食品汚染物質として日常的に摂取する可能性がある。そこで、ジメチルアミンやモルホリンなどの二級アミンと亜硝酸ナトリウムをin vitroで作用させ、生成するニトロソ化合物の生成量をHPLCで定量した。その結果、ニトロソ化合物はpH2〜4で最も容易に生成すること、生成量が亜硝酸塩のモル比に2乗に比例することが明らかになった。マウスに両化合物を投与したin vivo試験においても同様の結果が得られた。 また、ビスフェノールA、エストラジオールを含む内分泌撹乱化学物質を同様に酸性条件下で亜硝酸塩と作用させたところ、変異原性が発現し、モノあるいはジニトロ体が生成することを確認した。 一方、二級アミンと亜硝酸塩の系に緑茶抽出物やカテキンを加えてin vitro、in vivoで作用させたところ、緑茶試料が低濃度の場合ではニトロソ体の生成が上昇したが、一定濃度に達すると、ニトロソ体の生成が抑制するという興味ある知見が得られた。これらの研究結果は生体異物の複合による変異・がん原物質の生体内生成メカニズムを明らかにするとともに、食品成分の活用によりがん予防が十分に期待できることを明示するものとなった。なお、毒性検定法としては、Ames試験とともに小核試験やコメットアッセイを併用することにより、発がん性のスクリーニングが精度高く実施できることを明らかにした。
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