食行動は時代の社会背景の影響を受けながら次第に変化する。正しい食習慣に対する知識の普及とともに不適切な食行動を正しい方向へと変容させることによって、正しい食習慣を確立することが大きな課題となっている。日本では食事の時に飲み物として緑茶が飲まれているような食事は一家揃った食卓であり、また食事内容も主食、副食、副菜の揃った理想的なものであった。本研究では日本人の伝統飲料である緑茶の飲用実態を調べることによって、日本の食卓の変化とその要因を推論することを目的に東京都、青森県、静岡県、阪神地区、沖縄県、および緑茶を飲む習慣を共有してきた中国、モンゴル、韓国の女子大学生の飲み物調査を実施した。沖縄では烏龍茶が主流であり、緑茶の歴史は浅い。しかし現在の沖縄の高校生は烏龍茶を飲まなくなり、むしろ緑茶をよく飲んでいた。その飲用率は阪神地区や滋賀県よりも高かった。茶産地である静岡ではどの年齢層も緑茶の飲用率が最も高く、茶産地との関連性が見られた。若年層では東京都では緑茶の飲用率は高かった。しかし、おおむね若年層では麦茶、中高年層では緑茶が主流であった。また若年層では紅茶、中高年層では緑茶、中間層ではコーヒーに対する嗜好性が高く、年齢階層によって飲み物の飲用率や嗜好は大きく異なっていた。中国や韓国の女子大学生において飲用率が最も高かった飲み物は水であり、緑茶の飲用率は非常に低かった。一方、モンゴルでは地方出身の学生では緑茶の飲用率は高かったが、ウランバートル出身者では緑茶とともに紅茶の飲用率が高く、緑茶の飲用率の低下傾向が見られ、また、紅茶やコーヒーに対する嗜好性も高かった。緑茶の飲用率に関しては中国と韓国では低く、モンゴルと日本では高いという共通点がみられた。また、若年層の飲み物は緑茶からコーヒーそして紅茶へと推移していくことが示唆された。
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