研究概要 |
動脈硬化症の進行には高脂血症とともに血中脂質酸化が関わることが知られている。そこで、血中ならびに臓器中の酸化の程度を測定して、ネギ属野菜類投与時における生体内における抗酸化効果を調べた。さらに血圧上昇に対する影響も調べて、動脈硬化症の予防・治療に有効な実践的な成果を得ることを目的とした。今年度はネギ属野菜類のうち世界中で多食されているタマネギについて、血圧上昇抑制効果および抗酸化効果に対する加熱の影響を、NO合成酵素阻害剤(L-NAME)誘発高血圧ラットおよび自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて検討した。[方法]雄性SDラット(6週齢)を4群に分け、1群には水を、3群にはL-NAME水溶液(50mg/kg BW)を飲料水として投与した。水投与群には5%セルロース飼料を与え、L-NAME投与群には5%セルロース飼料,5%生タマネギ飼料、または5%加熱タマネギ飼料をそれぞれ与え、4週間飼育した。血圧は収縮期尾動脈圧をTail-cuff法で測定した。さらに飼育終了前3日間の尿を採取して尿中NO^<2->/NO^<3->排泄量を測定し、飼育終了後の血漿過酸化脂質(TBARS)、大動脈血管のNO合成酵素(NOS)活性を測定した。同様の方法で、日本SLCより購入したSHRについても検討した。タマネギ試料は生、あるいは60分間沸騰加熱したものを凍結乾燥して粉末にしたものを用いた。[結果]L-NAME誘発高血圧ラットに対して、生タマネギの血圧上昇抑制効果は、タマネギを100℃60分間加熱することにより消失した。またL-NAME誘発高血圧ラットにおける生タマネギによる血中TBAR上昇抑制作用は加熱により見られなくなり、尿中NO代謝物排泄の減少や血管NOS活性の低下を抑制する傾向も見られなくなった。SHRを用いた実験においても、生タマネギの効果は加熱調理により見られなくなることが示され、タマネギをあまり加熱しないで摂取することが望ましいと考えられた。
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