山口県大島郡東和町在住の65歳以上の高齢者について本調査内容を説明し、被験者としての同意が得られた者232名についてまず健康診査を実施し、異常のみられた者40名を除いた192名(男性66名、女性126名)について本調査を実施した。その結果、被験者の平均年齢は75.1±0.4歳であった。 調査は平成15年9月〜11月にかけて実施され、身体計測(身長、体重、体脂肪率、皮下脂肪厚、上腕周囲長)に加え血液生化学検査ならびに免疫検査(総リンパ球数、Tリンパ球幼若化能、NK細胞活性、Tリンパ球およびNK細胞割合)を実施した。また、同時に運動機能検査(握力、体前屈、開眼片足立ち、最大歩行速度)とアンケート調査(食生活、日常生活機能)を実施を行った。 まず、アルブミン、トランスフェリン、皮下脂肪厚ならびに総リンパ球数を用いて算定された数値から健康状態を判定したところ被験者全員が"良好"という結果であった。しかし、高齢者の末梢血Tリンパ球幼若化能は対照の若齢者に比べ低下する傾向を認めた。また、高齢者では若齢者と比べて血漿一酸化窒素濃度が有意に高く、さらに血漿一酸化濃度の高い者ほどCon A刺激にともなう末梢血Tリンパ球幼若化能が低いことを見出した。このことは、高齢者のTリンパ球機能低下に対して血漿一酸化窒素濃度上昇が関与することを示唆するものである。一方、VLDLコレステロール当たりのα-トコフェロール濃度が高い高齢者ほど末梢血リンパ球幼若化能は高いことから、ビタミンEによる抗酸化作用により一酸化窒素の生成が阻害され、その結果として一酸化窒素を介した細胞性免疫能低下が改善されたものと考えられた。 以上、高齢者におけるTリンパ球を中心とする細胞性免疫能の低下を改善し、高齢者の健康保持・増進を図るうえでビタミンEの十分な摂取が不可欠であることが示唆された。
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