過去50年間、日本の食卓は大きく変わってきた。一家団欒を重視した食卓が消失し、その結果、家族間の心の絆も希薄になってきた。子どもたちの連続的な食生活体験の機会も減少し、一連の食行動過程を学ぶことが困難になっている。その変化として、食事の欠食があげられている。さらに、お菓子ばかり食べて食事を食べないという極端な偏食児の存在が指摘されている。幼児の偏食は、母親の食生活上の悩みとして上位にあがっている。偏食内容としては、野菜類が多くを占めている。 本研究では、極端な偏食がみられる幼児に焦点をあて、子どもたちの食材に対する愛着形成をはかりながら、食行動発達を基盤に連続的な食生活体験を重視した食教育の在り方について検討した。 本大学に隣接している幼稚園をモデル園とし、幼児に対する偏食改善方法として、子どもたちが「種蒔き、水やり、収穫、調理して食べる」という連続した一連の食行動に携わることができる広さを備えた農園を準備し、活動を展開した。 幼児を対象に、食材との体験活動により、偏食行動が有意に改善されることが明らかとなった。家庭において、食材に直接触れる機会が乏しくなった子どもたちに、食材との出会いを重視した食教育を展開することにより、食材に対する愛着が形成され、偏食行動が改善されたものと考えられる。また、同時に子どもたちの感性や表現力、社会面にも変化がみられた。 本研究から、子どもたちの食材に対する愛着をはかりながら、食行動の発達を基盤に連続的な食生活を重視した食教育をおこなうことが、幼児期の食教育の視点として重要であることが推察された。
|