研究概要 |
1.加熱により相変化を示す食材成分単独系、例えば脂質類、寒天水溶液のゲル、鶏卵タンパク質等では、加熱による内部温度の上昇曲線において相変化にともなう転移熱(多くの場合は吸熱)の影響を受け、デンプンの糊化現象を除き,温度上昇曲線に相応の乱れが見られる。しかし、これらの単独系に相変化を起こさないところのThermo-insensitiveな食材等を添加すると、その添加量の増加とともに転移熱による温度上昇曲線の乱れが見られなくなる。 2.この現象を意図的に顕在化させその原因を明らかにするため、トリステアリンの融解、ゼラチン水溶液ゲルのゾル転移、および寒天水溶液ゲルのゾル転移を取り上げ、これら相転移に対する小麦粉、木炭粉末、木炭灰、緑茶粉末、純ココア粉末等の添加の影響を、金属製容器を用いた各試料内部温度の上昇曲線(加熱曲線)の測定を通して観察した。なお、小麦デンプンの糊化温度領域は広く、その加熱曲線に糊化熱に基づく乱れが現れないため、これを添加物の対称とした。 3.その結果、トリステアリンの融解熱による加熱曲線の乱れは、木炭灰の30wt%から緑茶粉末の60wt%添加により消滅し、ゼラチンゲルのゾル転移の乱れは、緑茶粉末の30wt%添加から、小麦粉・ココア粉末混合物の40wt%添加により消滅した。寒天ゲルのゾル転移の乱れは、小麦粉の15wt%添加からココア粉末の20wt%添加により消滅した。その理由についてはさらに実験・観察を続け、その結果を整理する必要があるが、各成分の転移熱がThermo-insensitiveな添加物に吸収され、平均化されることによると考えられる。 4.なお、加熱にともなう食材の力学的性質の変化を追跡する手段として、応力緩和現象を測定するための予備実験も併せて実施した。
|