加熱調理により相変化をともなう食材系の熱移動と力学的性質の変化

2004 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 15500553
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 一般
• 研究分野: 食生活学
• 研究機関: 東京家政大学
• 研究代表者: 長尾 慶子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (20217970)
• 研究期間 (年度): 2003 – 2004
• キーワード: 食品材料 / 熱伝導 / 相転移 / ゲル化 / 顕鏡観察 / DSC測定 / 機械的応答 / 吸熱

研究概要

1)食材の加熱過程において起こる相変化が機械的性質や熱伝導に与える影響を明らかにするための実験的研究が行われた。
2)水分量を変化させたデンプンモデル系における糊化の変化の微視的および巨視的観察(DSC測定や、微小応力をかけた機械的な応答など)が引き続いて行われた。
その結果、甘藷や小麦デンプン粒の糊化過程でのデンプンの融解の程度は、うるち米やコーンのより早くおきることが観察された。DSC測定では甘藷デンプンの糊化に伴う吸熱量が27.3mJと最も高く、小麦デンプンは-15.2mJと最も低かった。
初期弾性率や定常粘性率などの機械的応答は、デンプン分子の結晶の消失に依存しており、70℃をピークにした凸状の曲線をなした。
3)食材加熱中の食材の相変化を明らかにするために、試料を加熱用金属容器に入れて、加熱面から一次元(X軸)方向の温度上昇の様子を測定し、固体脂の融解、寒天やゼラチンなどのハイドロコロイドのゾル転移などの現象が、内部の温度上昇を抑制する状況が認められた。またその現象がココア、繊維、緑茶および小麦デンプン粒などの、熱に応答しにくい食材を多量加えていくと抑えられることが明らかとなった。
これらのことから、相転移による吸熱現象が加熱による内部の温度上昇を抑えること、一方で熱的応答の少ない材料によって吸熱による一時的な温度低下が抑えられたことを示唆するものである。
4)加熱中の食材の力学的性質の変化を明らかにするために、応力緩和の現象を適用する試みも実施した。

研究成果

• [雑誌論文] デンプン〜水系の糊化に伴う状態変化の微視的および巨視的観察 (2005)
  • 著者名/発表者名: 長尾慶子, 藤井彩香
  • 雑誌名: 日本調理科学会誌 38 ページ: 46-50
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Retardation Phenomenon Applied to the Thermal Conduction in Foodstuffs during a Variety of Heating Procedures (2005)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao, S.Matsumoto
  • 雑誌名: Journal of the Society of Rheology, Japan 33(In Press)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Changes in the Macro- and Microscopic States of Starch Granules in Water Systems during the Process of Gelatinization (in Japanese). (2005)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao, S.Fujii
  • 雑誌名: Journal of Cookery Science of Japan Volume 38, No.1 ページ: 45-50
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Retardation Phenomenon Applied to the Thermal Conduction in Foodstuffs during a Variety of Heating Procedures (in English). (2005)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao, S.Matsumoto
  • 雑誌名: Journal of the Society of Rheology, Japan Volume 33, No.2(in Press)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] 小麦でん粉を用いた食材モデル系の伝熱特性の検討 (2004)
  • 著者名/発表者名: 藤井彩香, 長尾慶子
  • 雑誌名: 日本調理科学会誌 37 ページ: 283-291
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] 鍋の伝熱学的研究(Heat Transfer Study of Cooking Pans Heated from Below) (2004)
  • 著者名/発表者名: 高尾俊匡, 長尾慶子, 渡辺誠, 庄司正弘
  • 雑誌名: 第41回日本伝熱シンポジウム講演論文集 vol.III ページ: 733-734
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] 熱伝導実験用食材モデルの力学的性質に及ぼす水分量および温度の影響 (2004)
  • 著者名/発表者名: 長尾慶子, 藤井彩香
  • 雑誌名: 日本家政学会誌 55 ページ: 573-580
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] 加熱により相変化をともなう食材系の熱移動と力学的性質の変化 (2004)
  • 著者名/発表者名: 長尾慶子
  • 雑誌名: 日本家政学会誌 55 ページ: 837-844
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Heat Transfer Characteristics of Food Models Prepared from Wheat Starch (in Japanese). (2004)
  • 著者名/発表者名: S.Fujii, K.Nagao
  • 雑誌名: Journal of Cookery Science of Japan Volume 37, No.3 ページ: 283-291
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Heat Transfer Study of Cooking Pans Heated from Below by Gas Fire (in Japanese). (2004)
  • 著者名/発表者名: T.Takao, K.Nagao, M.Watanabe, M.Shoji
  • 雑誌名: 41^<st> National Heat Transfer Symposium Japan Volume 3 ページ: 733-734
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Effect of Moisture Content and Temperature On the Mechanical Properties of Food Models for Examining Thermal Conduction (in Japanese). (2004)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao, S.Fujii
  • 雑誌名: Journal of Home Economics, Japan Volume 55, No.7 ページ: 573-580
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Changes in Thermal Conduction and Mechanical Properties of Foodstuffs Accompanying Phase Transitions during Heating (in Japanese). (2004)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao
  • 雑誌名: Journal of Home Economics, Japan Volume 55, No.11 ページ: 837-844
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Detection of Thermal Conduction Induced (Close by the Heating Plane in Foodstuffs during Different Procedures of Heating (in English). (2003)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao, S.Matsumoto
  • 雑誌名: Journal of Home Economics, Japan 54 ページ: 623-631
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Detection of the Thermal Conduction Induced Close by the Heating Plane in Foodstuffs during Different Procedures of Heating (in English). (2003)
  • 著者名/発表者名: K.Nagao, S.Matsumoto
  • 雑誌名: Journal of Home Economics, Japan Volume 54, No.8 ページ: 623-631
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より