研究概要 |
1)加工食品中の特定原材料のアレルゲン表示が食物アレルギー児および家族の食生活に及ぼす影響を,小児科医,保育所勤務の栄養士,保育士を対象にアンケートにて調査したところ,食物アレルギー児の食生活の質が大変向上した,向上したと回答したのは,栄養士が59.1%と最も高く,次いで小児科医45.7%,保育士38.5%であった。 2)インフォームドコンセントの得られた食物アレルギー児の母親を対象とした調査では,必ず表示をみていたが(100.0%),62.7%がアレルゲン表示の表記がわかりにくいと回答した。 3)アレルゲン表示からは原因抗原が含まれていないはずであるのに食物アレルギー児が即時型反応を示した食品中の当該アレルゲンの定量を行った。その結果,表示義務のある濃度以上(1g当たりに含まれる抗原量として10μg以上)の抗原量が含まれている場合と,濃度としては10μg/g以下であるが,摂取した全量として計算すると即時型反応を起こしうる抗原量になる場合とがあった。アンケートによると,小児科医の20.0%がアレルゲン表示がなされていない加工食品の摂取直後に症状が惹起された症例を経験していた。 4)食物アレルギー児の母親の57.5%は,特定原材料のアレルゲン表示がされるようになってから加工食品を選びやすくなり,食品の選択の幅が広がったと表示を評価する回答をした。この中には不適切な表示のために加工食品摂取後に即時型反応を経過した児の母親も含まれており問題は残るが,表示の義務化により食物アレルギー児の食生活の質が向上したと考えられる。 5)特定原材料測定キットに相応する卵白測定システムを確立する事ができた。原材料中の卵白の検出には不適であるが,加熱卵摂取による症状の誘発の有無との一致率が高く,ヒスタミン遊離試験の結果も考慮すると食品の低アレルゲン化の臨床的評価に適していた。 6)特定原材料測定キットによる抗原定量結果の食事指導への臨床応用が可能であった。
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