本年度は、学校給食運営におけるBSE問題の影響及び地元産食材料使用の実態を明らかにするために、酪農地帯へのヒアリング調査、関係諸機関での資料収集等を行った。 ヒアリング調査は、酪農地帯である北海道浜中町で実施した。ここでは酪農生産の動向、牛乳・乳製品の販売先、酪農家の生活における牛乳、乳製品等の活用方法、BSE問題の発生と学校給食への影響などについて調査を行った。 その結果、第一に、多くの酪農家の牛乳出荷先は、浜中町に工場を有するT乳業であり、Tブランドとして牛乳やアイスクリームに加工、全国販売していることが分かった。他方、学校給食への牛乳供給は、同町内の小規模メーカーK乳業によって行われていた。しかしながら学校給食への牛肉の活用、さらに地元産食材料としての牛肉の利用は見られず、BSE前後においてもとくに変化がないことが分かった。この傾向は、浜中町と同じ酪農地帯である道東のT町からの資料収集、分析の結果においても同様であった。 第二に、浜中町の酪農家では、自家用牛乳を活用しチーズ生産を始めた事例がいくつか見られた。中でも、O農場では数種類のナチュラルチーズを製造し、地元だけではなく、道内や全国の百貨店にも販売を広げていた。これは地元産食材料を、自ら加工し消費するという行動にとどまらない新たな動きといえる。この活動が今後、学校給食への酪農加工品提供に発展するならば、酪農地帯における新たな形態となるのではないかと考えられる。 科研採択後に新たに発生した、アメリカ合衆国におけるBSE問題とアメリカ産牛肉の輸入禁止措置の経過も踏まえ、今後、いっそうの資料収集が必要であるとともに、学校給食への酪農加工品の導入実態を明らかにすることが必要であると考える。なお、今年度は、地元産食材料利用に関する学会報告を共同で行ったことを付記する。
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