平成15年度の研究成果を踏まえて16年度はアントシアニンの脂肪細胞に対する作用機構を明らかにするため、ラット単離脂肪細胞へアントシアニンを投与した時の遺伝子発現変動をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。アントシアニンとしては、C3Gあるいはそのアグリコンであるシアニジン(Cy)を投与した(最終濃度;100μM)。なお、実験は投与24時間後に細胞を回収、総RNAを得た。得られた総RNAはプロトコールに従いcRNAを合成し、アフィメトリクス社RatGenome RG34Aアレイにハイブリダイズ、発色・検出を行った。その結果、コントロールとの発現強度の比較を行い、1.5倍以上に上昇、あるいは低下した遺伝子は、配糖体とアグリコンで共通するものとして220遺伝子に上昇、8遺伝子に低下が認められた。また配糖体のみあるいはアグリコンのみで変動する遺伝子も存在していた。そこでこれらの遺伝子についてクラスタリングを試みたところ、ほぼ8つのクラスターに分類されたが、各試料での挙動をみると、試料投与で異なる発現変動を示す遺伝子は約35%ほど存在していた。 また脂質代謝関連の遺伝子変動についてDNAマイクロアレイにより検討したところ、アントシアニン投与によりC/EBPαなどの発現上昇が観察され、その中でホルモン感受性リパーゼについては、RT-PCRによる確認でも優位な遺伝子発現上昇を認め、lipolytic activityについても有意な上昇が観察された。これらの情報と平成16年度の成果を統括してアントシアニンの抗肥満・糖尿病作用機構を考察した。
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