若い女性の痩身志向が骨量減少を引き起こすと懸念される。その主な要因として過度の減食によるエストロゲン分泌低下があるが、痩身志向と骨量との関係については一定した見解が得られていない。そこで、女子大生(142人)を対象に、ダイエット経験の有無が体組成、摂食態度、各種食品摂取頻度、生理不順、運動量に反映するか、それらの要因が骨量に影響を及ぼすかを検討した。体組成は生体インピダンス式(タニタ BC118)、骨量(stiffness)は、超音波踵骨測定装置(LUNAR A-1000 PLUSII)で測定した。摂食態度の指標としてEat及びBITE質問紙を用い、生活習慣及び各種食品摂取頻度をアンケート調査した。 過去及び現在のダイエット経験者(D:n=87 体重 52.5±94kg、stiffness 95.7±14.2)と未経験者(Non-D:n=45 49.5±5.8kg stiffness 90.9±13.9)とを比較した。体脂肪率及びBMIは両群とも正常範囲であったが、Dが、Non-Dに比し高値であった(P<0.05)。一方、除脂肪体重は両群に差を認めなかった。Eat及びBITEの総得点はDが高く(P<0.001)、BITEでは摂食障害傾向者はDでは9.2%(重症者は8.0%)、Non-Dでは1.8%(重症者は皆無)であった。さらに、生理不順者はDで39.1%、Non-Dで21.8%であった。運動量については両群に差を認めなかった。体脂肪率、BITE、食品摂取頻度を要因、stiffness値を従属変数として検討したところ、体脂肪率(p<0.0546)、BITE(p<0.0915)が骨量に関与する傾向が認められたが、それぞれの交互作用は認められなかった。 以上のことから、ダイエット経験は必ずしも体重減少に繋がらず、却って未経験者に比し、体重が重いために骨への負荷となり骨量に良い影響を及ぼしたことが示唆された。しかし、持続的な減食により体重減少が招来すれば、生理不順からエストロゲン分泌異常を引き起こし、骨量に重大な影響を及ぼすことが示唆された。 なお、エストロゲン合成を促進する因子について培養骨芽細胞を用いた実験を準備中である。
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