昨年度報告したように、痩身志向者は必ずしも体重減少に繋がらず、却ってダイエット未経験者に比し、体重が重いため骨への負荷となり骨量に良い影響を及ぼしたことが示唆された。しかし、持続的な減食により体重減少が招来すれば、生理不順からエストロゲン分泌異常を引き起こし、骨量に重大な影響を及ぼすことも示唆された。そこで細胞レベルの実験は来年度以降に実施するとして、今年度は昨年に引き続き、被験者数を加えて、生理不順が骨量に影響するか否かを検討した。 被験者320名のうち生理正常と申告した者全てを生理順調群(n=218)として、不順または無月経であったが再来した者全てを生理不順群(n=102)とした。 体組成は体組成計BC118(タニタ社製)で測定し、骨量の測定は、A-1000 PLUSII超音波踵骨測定装置(LUNAR社製)で実施した。データの分析にはSPSS13.0Jを用いた。体重、除脂肪体重、体脂肪率は両群とも正常範囲であったが、生理順調群が有意に高値であった。さらに、生理順調群でのダイエット経験者は121名(55.5%)、生理不順群でのそれは69名(67.0%)で、生理不順群のほうが高い傾向を示した。生理の順調・不順の群間には骨量(stiffness値)の差を認めなかったが、体重の最も重い生理順調群のダイエット経験群と体重の最も軽い生理不順群のダイエット未経験群の間には有意の差を認めた(p<0.05)。 以上の結果をもとに、生理順・不順、ダイエット経験、体脂肪率(または除脂肪量)を独立変数、stiffness値(骨量)を従属変数として交互作用を検討したところ、生理順・不順(p<0.262)には有意の差はないが、ダイエット経験(p<0.011)、体脂肪率(p<0.003)には差があり、しかも、生理順・不順×体脂肪との交互作用は認められた(p<0.007)。これらの結果からき生理順調者の骨量は体重に依存するところが大きいが、生理不順者の骨量にはエストロゲン不足や他の要因の関与が示唆された。
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