研究概要 |
ヒトを用いた検討: 被験者400名のうち同意の得られた166名について,エストロゲンレセプター(ER)の多型を解析した.ゲノムDNAはゲノム倫理指針に従って採取した.DNAの採取後,ERαのIntren IのPvu IIとXba IについてRFLPを実施した.骨量は,歩数,高校時代の運動経験,現在までの継続的運動のいずれにおいても,運動量が多いほど多かった.遺伝子多型の検討ではPpxx,PpXx,ppxxタイプのものでは,運動により骨量が多くなった(p<0.05).生理不順者はppxxに多く(59.3%),逆にPPXX(n=4)での不順者は1名であり,その群の骨量が最も少なかった.PPXXのヒトは運動を積極的に実施してはいるが,体重が他の群に比し有意に少なく,それが骨への負荷不足に起因するのか,遺伝子多型に依存しているのかは,例数を増加して検討する必要がある.今回の結果は,運動による効果が少ないタイプがある一方,軽い運動でも骨量に影響を及ぼすタイプもあることを示して,適度の体重維持と軽い運動など日ごろの地道な努力が骨粗鬆症を予防し,寝たきり老人の増加に歯止めをかけることを示唆した. 骨芽細胞を用いた検討: 骨芽細胞(ROS17/2.8)へのエストロゲン(E)10^<-9>M,テストステロン(T)10^<-7>Mの24時間添加が,ビタミンD_3受容体mRNA(DR)の発現にどのように関与するかを検討した.その結果,TはEと同様にDRの発現を増大させた.Tがアロマターゼ(A)を介してEに変換されて効果を発揮しているのか,Tそのものが直接に作用するのかは今後検討する必要がある.しかし,TがAを介してEに変換されて効果を発揮しているとするなら,骨芽細胞に存在するAがE合成に関与すると推定できる.これは,老齢者の骨組織がEの合成を促進し,骨量維持に重要であることを示唆する.
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