平成9年〜11年に科学研究費補助金の交付をうけ、キノコ中に血栓溶解酵素が存在することを明らかにした。食品として、さまざまな生理活性を有するものが数多く報告されているが、経口摂取され、生体内で有効に働く可能性があるのかどうかについて明らかにされているものは少ない。 そこで、本研究は、このキノコに存在する血栓溶解酵素の中で極めて活性の高いマイタケを用い、血栓溶解酵素としての活性を維持しながら生体内に取り込まれていくのかどうかなど、本酵素の生体内での挙動について明らかにすることを目的としている。 昨年度、未精製の本酵素抽出液を用い、給水投与によるマウスへの経口投与実験をおこなったが、投与濃度および量の問題もあり明らかな結果が得られなかった。このことから、本年度は本酵素の精製を進め、比活性を高めたもので投与濃度や投与方法の検討をおこなうことを計画した。本酵素の精製や加熱や消化酵素に対する活性の変化についての検討にあたっては、従来用いてきたフィブリノーゲンザイモグラフィー法を主体として進めた。活性物質は硫安30〜60%沈殿画分に多く存在し、またこの画分の活性は60℃90分間加熱しても減少しなかった。さらにこの画分についてイオン交換カラムクロマトグラフィーをおこなった。条件検討の結果、強陰イオン交換体のMono QによりpH5.8で分離精製が可能であることがわかった。この液体クロマトグラフィーにより、60K付近に強い活性を有する2本のバンドに精製することができた。現在、このカラムクロマトによりマウス投与サンプルの調整を進めるとともに、精製物によりシークエンスを行っているところである。
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