食物アレルギー疾患について、消化器官の腸管粘膜系における食物アレルゲン応答や免疫寛容は生体防御の関連性からも重要な問題である。本研究では、アレルゲンによる免疫寛容の成立を明らかにする目的で、アレルギー発症ラット(Brown Norway)に卵白を継続投与し、血漿中の総IgE抗体、および卵白主要アレルゲン・オボムコイドに対する特異IgE抗体産生について追跡した。さらに、腸管粘膜におけるBiotin化漂識卵白アレルゲン・オボムコイドの通過性について検討した。 【結果】アレルギー発症ラットを2群に分け、1群には毎日40mg卵白をゾンデにて18日間、経口投与し、他の1群は卵白非投与群とした。この間の総IgE及びオボムコイド特異IgE抗体産生能を追跡した。その結果、卵白投与により総IgE抗体と特異IgE抗体価はいずれも、投与3日目に水投与群に比較して有意な(p<0.01)増加を示し、さらに継続して卵白投与を行っているにも関わらず6日目には有意な(p<0.01)低下を示した。その後、卵白は18日間の卵白投与中も抗体価の有意な低下を示し続けた。このことより、アレルギー発症ラットにおける卵白溶液の経口投与は、特異抗体価の増加を示すが、継続投与を行うことによりアレルゲンに対する免疫寛容が成立したものと推定された。一方、Biotin標識化アレルゲン・オボムコイドをアレルギー発症ラットに投与した後、一定時間(1時間)後に採血を行い、血漿中Biotin標識坑原定量を追跡した。その結果、アレルギー発症ラット(Brown Norway ♂)の腸管粘膜におけるアレルゲン通過性は、4週齢に比較して8週齢ラットで有意に(p<0.05)高い通過性を示した。従って、アレルギー発症は、粘膜組織の崩壊を誘発し、抗原通過性を高めるものと推定された。次年度には、アレルゲン通過と粘膜組織観察を同時に詳細に検討する。
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