研究概要 |
1 大分県等の近世以降の魚附林思想の歴史を調査し,以下のことが明確になってきた。その研究成果の一部を学会(日本教育方法学会,北海道教育学会)で発表した。 近世にはイワシ・ニシンが魚肥として内陸部に大量に投入された。とりわけイワシ漁業の振興策は1600年代初頭の魚附林思想の契機となった。江戸時代中期の岩手県や新潟県の魚附林はサケ種川制との関係で重視された。1897年森林法における保安林で「魚附」が制定されたのは,江戸中期から明治中期までのサケふ化技術等の進展とその実現圧力等があったと思われる。サケは海由来の物質を内陸部に運ぶ「運搬者」でもある(さらに,クマ等を中心とした内陸の野生動物は,捕らえたサケを川から離れた場所へも運ぶ)。日本近世の魚附林思想の展開にとって,海と陸との間の物質循環(とりわけ海から陸への物質移動の局面)は大きな契機であった。教科書等での「魚附林」の記述には「森が海を育てる」との説明(物語)が多い。しかし,海-森の間で双方向的な物質循環を少なくとも1600年代初頭から日本人は意識していたことが魚附林思想の歴史調査から明らかになった。 2 北海道での魚附林保護・漁業関係者の植林活動にかかわる約30年間の教育実践の系譜を調査し,北海道教育学会で発表した。 3 大分県や北海道厚岸およびその上流地帯にあるパイロットフォレストでのフィールド調査を行い,そこでの植生調査,代表的な樹木等の撮影を行い,データベース化のための資料を収集した。 4 森林(土壌)の保水効果等を児童等が容易に調査・測定することができるように,土壌への水の浸透速度を簡易測定する装置を開発した。 5 環境教育・総合学習等での体験的学習を保証する場として地域の施設(大学付属演習林等)の利用可能性について調査を行い,その研究成果の一部を目本理科教育学会で発表した。
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