研究概要 |
一連の本研究活動は,数学の応用,モデリングといった視座からの実践的な研究であり,主に中学校の数学の授業に関わって実施した。広く現実世界における生の問題をも,数学の授業で積極的に取り扱おうと試行した。また,研究の方法としては,いわゆるアクションリサーチを採用した。実際の授業研究に対し,研究者として単に参与観察の立場に留まらず,指導者(授業者)として授業の構想や展開に直接的に深く関わる方法を採用した。とりわけ,本研究の本年度の主たる成果として,2004年2月にドイツのドルトムントで開催されたICMIの国際会議(International Commission on Mathematical Instruction, Study14 : Application and Modelling in Mathematics Education)での講演や日本数学教育学会論文発表会等に論文を発表した。そこでは,モデリング過程を学習心理学的な視座から捉えようとする提案を行なっている。具体的には,数学の授業における問題解決に際し,学習者の保有する心理的実感と,解決場面における客観的事実とのギャップやズレに着目し,それらのギャップを積極的に捉えることで,モデリングの授業がより有機的なものになりうるという主張をしている。ギャップやズレについて,「ギャップやズレが,どこに起こりうるのか」という発生に関わる議論に留まらず,「ギャップやズレが,どのような状態なのか」その様相の詳細な把握まで踏み込んで分析・考察した。事前にそのようなギャップを詳細に整理しておくことで,教師が生徒の抱くであろうギャップをより明示的に予想し把握できうることを明らかにした。
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