研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き、数学的モデリングを促進する考え方の育成を目標に,モデリングを熟知していない中学校3年生の生徒を対象にして,下記のような三つの目標系列で指導内容を構成し、特に評価方法に焦点を当てて研究を行った。 「第1段階:数学的モデルをつくって考える意味を理解する」,「第2段階:数学的モデルを構成・分析する際に要求される考え方を獲得する」,「第3段階:多様な考え方を総合的に用いて解決する」。これを基に,グラフ電卓を導入して,全10回にわたって実践を行った。 モデリングを促進する考え方の評価方法として,指導目標の系列の第1・2段階に焦点を当て,第2回(鏡の謎),第5回(財産が2倍になる年数),第6回(じゃんけん),第7回(缶詰)の授業で意図したある特定の考え方に焦点を当てた問題を開発し,その評価基準を設定して分析した。そして,その結果と授業展開とを対比しながら,授業展開を反省する流れをとった。モデリングを促進する考え方の評価問題と考え方の深さに応じたいくつかの段階からなる評価基準は,テスト問題間の難易度の差にいかに配慮するか等に課題が残るが,生徒が鍵となる考えをどの程度理解しているかを判断する上で有効な方法の一つといえる。授業と事後テストをセットで捉えることにより,何が改善すべき点であるのかを的確に把握することが可能になる。 また、目標系列の第1・2段階において,モデリングを促進する鍵となる考え方の理解を促すには,「対立-止揚」過程を生徒同士の討論に委ねるだけでは難しいことがわかった。来年度は、モデリングを促進する鍵となる考え方により一層焦点が当たるような「対立」を意図的に授業の中に設定していく方法について考えていきたい。
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