研究概要 |
数学的モデリングの授業を構想する際にどのような点に着眼すればよいのかについて、生徒の陥りがちな考え(個人及び集団で)とその解釈・支援に関して、次の3点が明らかになった。 (1)数学的モデリングを熟知していない生徒は,問題提示がオープンな場合,現実場面を厳密に分析しようとする考え方に偏る傾向にある。逆に,相対的にクローズドな場合は,数学的に処理しやすくするための考え方に偏る傾向にある。それゆえ,前者の場合は,数学的に処理しやすくするための考え方に,後者の場合は,現実場面を厳密に分析しようとする考え方に着目できるような働きかけが必要である。 (2)数学的モデリングを熟知していない生徒は,分析的アプローチで定式化された単純な数学的モデルとその解答が与えられたとき,そこで用いられる数学的知識・技能とその手法だけを検討し,どのような仮定が設定されているのかに注意を払わない傾向にある。一方,構成的アプローチでは,仮定を設定する段階から数学的モデリング過程を踏んでいるため,数学的モデリングの全過程が概観できており,分析的アプローチの生徒より,どのような仮定が設定されているのかに注意を払う傾向にある。これより,数学的モデリングの全過程を概観できている方が,数学的モデルの検討・修正はよりよく進展する傾向にあるといえる。 (3)数学的モデリングを熟知していない生徒は,現実場面の現象と数学的モデルとがうまく一致しないとき,現実場面の現象よりも数学に足場を置いて考える傾向にある。つまり,用いた数学的手法が適切かどうかより,用いた数学的手法がうまくいくように,現実場面の現象を読み直そうとする傾向にある。
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