研究概要 |
【求められる知識とその使い方を教える授業の改善】「学習」の過程は本来,既有の知識を使って新しい知識を"つくり上げていく"思考の過程なのである.ところが,教育現場には,学力のレベルをもっぱら知識とその運用能力のレベルと捉え,そのような学力のレベルを高めることが学習のレベルを高めることであると考えている傾向がある.そのために,既有の知識を使って新たな知識を"つくり上げていく"思考-それこそ,数学的思考の最も楽しい肝心な思考であるが-それが疎かになっているのである.数学的思考の最も楽しい部分が除かれた算数・数学の授業では"数学嫌い"が多くなり,数学的知識とその使い方を教える授業に対する興味・関心も低下していくことが避けられないであろう.実際,筆者が学校現場から受ける学習指導法改善の依頼も,その殆どが,このことへの対応を求めるものである. 【本年度の研究・実践】本年度は,福井県大野市有終東小学校と坂井町丸岡中学校で,既有の知識を使って新しい知識を"つくり上げていく"算数・数学の授業の研究・実践を行うことが出来た.授業の研究領域は,5年生の「立体の学習」と中学校1年の「立体の学習」であるが,両方の授業で授業のベースになっているのは次のような活動である.(1)学習内容を理解したり,自己活動として学習内容を"つくり上げていく"ために必要不可欠な"イメージ"を数学的言語に依存しない"触覚情報"に基づく思考活動を採り入れた学習活動(2)目に見える手作業と"触覚"が頼りの手作業との結合によって,思考の対象を"つくり上げていく"活動(3)(1)(2)の活動を言語で表現する活動 最も注目すべき本年の最大の成果は,上記の数学的言語に依存しない思考活動は,小学校の5年でも,中学校1年でも長期間に亘り,すべての子ども達が高い興味・関心を示しながら真剣にとり組むことがわかって来たことである.
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