研究概要 |
数学的な論理の構成能力の育成は数学教育の最重要目標の一つであることから,子ども達を数学者と質的に同じような立場において数学的論理構成能力の育成を図ることが,数学学習の基本・本質であると言われて来た.しかし,Polya(米国)や,C.Gattegno(英国),H.Freudenthal(オランダ)等,数学者達の数学的論理構成活動に関する提言を受けて試みられて来たさまざまな授業の殆どが,数学学習の基本・本質を踏まえた授業ではなかった.数学者から示されたある数学者の数学論理構成活動と同じ活動をクラスの子ども達一人一人に実行させるような授業こそ,数学学習の基本を踏まえた授業であると考えて来たからである.多くの人達が,数学者の共同による論理構成活動に目を向けて来なかったのである.クラスの子ども達にある一人の数学者の論理構成活動をさせることと,子ども達一人一人を数学者と同じような立場に置くこととは違うのである.数学者の共同による論理構成活動を明確にし,その活動の場を保証しなければ,子ども達一人一人が独立した数学者のようには振る舞えないのである.以下に示す本年度の研究成果(1)〜(3)の源はすべて,このことに気付いたことにあると言って良いであろう. (1)数学者の共同による論理構成活動と同じ「枠組み」をもつ算数・数学の授業は"遅れがちな子"や"進んでいる子"ら習熟度の差が学習活動の障害にならないことがわかった. (2)数学者の共同による論理構成活動と同じ「枠組み」をもつ算数・数学の授業では,子ども達一人一人が独立した数学者と似たような立場に置かれるということがわかった. (3)数学者の共同による論理構成活動と同じ「枠組み」をもつ算数・数学の授業は,数学学習の基本・本質を踏まえた授業になっていることがわかった.
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