研究概要 |
密度測定による金属同定は,密度の測定値と文献値との比較によりなされる.測定値には測定誤差が含まれるため,測定値と文献値が一致するとは限らない.同定するには,同定可能な測定値の範囲(同定可能範囲)を設定する必要がある.同定可能範囲の設定のしかたは,同定のために参照する特定金属の密度(特定値)に依存するタイプ(特定値依存型)と,特定値と数値が隣接する密度(隣接値)に依存するタイプ(隣接値依存型)に区別できることが見出されている. 本研究の目的は,学習資料の違い,実験体験の有無,発問のしかた等,授業方法の違いが同定可能範囲の設定のしかたに及ぼす影響を明らかにすることにある.今年度の成果を以下に示す. 1.学習資料の違いが同定可能範囲の設定のしかたに及ぼす影響をみるために,特定値と隣接値との数値差(隣接密度差)が大きい密度表を用いた場合について,特定値依存型と隣接値依存型の特性を分析した.特定値依存型は隣接密度差の大小に影響されないこと,隣接値依存型は隣接密度差の増加により同定可能範囲を広げることを明らかにした. 2.実験の体験および実験で得られた測定値と文献値との不一致の大小の体験が,同定可能範囲の設定のしかたに及ぼす影響を検討した.現在分析中であるが,隣接値依存型の同定可能範囲の設定のしかたは,体験した不一致の大小により影響されることが見出されている. 3.学年進行による同定可能範囲の設定のしかたの変化をみるために,高校生に対して質問紙調査を実施した.現在,結果を集計,分析中である. 4.カルフォルニア大学で開発された科学教育プログラムSEPUP(Science Education for Public Understanding Program)のモジュールを収集した.日本の理科教育への適用を検討中である.
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