本研究では、現職教師(とりわけ初任教師)及び教員養成系学部に在学中の教師志望学生が保持する、理科授業に関する知識・思考・信念の実態を明らかにするとともに、現職教師を対象とした研修や教員養成カリキュラムが、理科授業に関する彼らの知識・思考・信念の形成・変容に与える影響について考察することを通して、理科教師の専門的力量の向上を目指した教師教育の改善のための示唆を得ることを目的とした。本年度は4カ年計画の第1年次であり、小学校および中学校の初任教師8名(正規採用1年目〜2年目)の理科授業を観察し、その授業をビデオカメラなどで記録するとともに、教員養成課程在学時及び現時点での理科授業の構想と実践に関する初任教師の考えや、理科授業の専門的力量の向上に寄与した初任者研修や教員養成カリキュラムの内容等に関するインタビュー調査を行い、ミニディスクなどに記録した。また、教員養成課程に在学している学生を対象とした質問紙調査を実施するとともに、教育s実習における教壇実習を観察し、ビデオカメラなどを用いて記録した。そして、以上のインタビュー調査の記録の文字化や、質問紙調査の回答結果のコンピュータへの入力などを含めたデータ処理を行うなどして、初任教師及び教員養成課程で学ぶ学生を対象とした、理科教師としての専門的力量の向上に関する今後の追跡調査のための基礎データを得た。さらに、これらのデータの一次分析を行い、2年次以降の研究のための視点を整理し設定した。なお、教育実習期間における教師志望学生の理科授業イメージの変容や観察・実験観の様態に関する研究を、本研究の開始に先立って実施してきていたが、これらの研究は本研究の内容と密接に関連したものであると考え、本年度の研究内容の一部として追加的に位置づけ、その成果の一部を論文として発表した。
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