この会議は技術教育にかかわる職業、教師教育、指導・管理、カリキュラム・教授、創造性、認証性、専門職、評価・テスト、国際展望などを扱っているが、この5年間に共通するテーマは工学と技術教育との関連であることであるように思われる。すなわち工学分野の基礎を培う初等中等教育として技術教育を位置づけようとする姿勢をみることができる。またその実現を大学などの教育機関の機能を通して行おうとする姿勢が、重点的に取り上げる問題が教師教育または教員養成の問題であることに反映しているように思われる。筆者は、1997年11月からこのミシシッピー・バレー技術教師教育会議に参加しているが、会議後にスタンダード(国際技術教育学会、2000年4月)の出版に向けての草案作りための第1回目のワーキングが開かれたことを覚えている。このようなワーキングは、ITEAでも行われており、それは、技術的素養のためのスタンダードのテキストに掲載されている査読者の多さからもわかる。今後スタンダードの内容をもとにした教科書が出版されれば、スタンダードの本格的な実施にともなって全国調査のテスト評価の方法や結果などについて今後議論が進んでくることが予想される。 インダストリアル・アーツからテクノロジー・エデュケーションへ、さらにスタンダードの出版と15年間で大きく変化しつつあるアメリカ合衆国の技術教育であるが、技術教育にかかわる人々の中には、基本的にhands on(ものつくり)の重要性を主張する意見がある。 筆者は、アメリカ合衆国の技術教育は、基本的に消費者としての一般市民の素養として考えられはじめているのではないかという意見をもっている。職業として直接生産にかかわる一般市民の割合は多くはない国において技術教育の果たす役割のひとつには、ものつくりを通して学ぶべきこととして子どもたちの問題解決能力や創造性などの育成であるといえるのかもしれない。 ミシシッピー・バレー技術教師教育会議のもつ歴史と活動の原動力の大きさは、アメリカ合衆国の技術教育を支える上で重要である。
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