高専の物理系科目をより魅力的にするための方策として、宇宙・天文についての教育とJava言語等を用いた計算機シミュレーションによる物理現象の視覚化に注目している。本研究では、その大掛かりなハードウェア的土台である「大島インターネット天文台」構築にシフトした内容となったが、天文台の具体的な完成に漕ぎつけることが出来た。研究実績については以下の通りである。 1 ディジタル天体観測システムの構築 インターネット天文台構築方針を決定し、科研費等により口径35cmシュミットカセグレン式望遠鏡、口径4cm太陽望遠鏡、冷却CCDカメラ、制御BOX、制御用PC、また、本校教育設備充実費により縦2m×横4mの電動スライディングルーフから成る天体観測室を設置した。これらハードウェアだけでなく、インターネット天文台として機能させるためには、各種機器を制御するソフトウェアが必要である。大島インターネット天文台は熊本大学方式を採用している。具体的には、インターネット上のクライアントPCがアクセスするWebサーバと制御PCの間はTCP/IPソケット通信を行い、制御PCは受け取った制御信号により、Perlプログラムあるいはシェルスクリプトで各種機器をシリアル制御する方式となっている。クライアントはRealPlayerにより、天体ライブを体験できる。また、天文台構築中の段階から、幾つかの教育的実践も行った。 2 視覚化プログラムの開発 Java言語を用いた量子力学や力学の視覚化プログラムを幾つか作成している。Flashも用いたプログラム開発はこれからであるが、そのための最新の科学的知見を得るため、宇宙初期の相転移や中性子星内部の高密度状態に関連する計算機シミュレーションをスーパーコンピュータ上で行い、幾つかの研究成果を得ることができた。 今後はこれらの研究の発展と科学教育への応用、特に高専の物理系科目用の数時間分の教材作成とその実施を目指したい。
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