研究概要 |
本研究では,動画を使ったドイツ語の聞き取り訓練用の教材を開発することが主目標である。開発する教材は自由に問題を入れ替えて,利用できるようにするために,ドイツ人教員の協力を得て,発話意図ごとにモノローグを作成して演じてもらい,デジタルビデオで録画した。そしてこれをパソコンに取り込み,ノンリニアで編集し,このビデオ素材をネットワーク型の教材に組み込んだ。さらに,この教材に対応した聴解能力の練習問題および試験問題を作成し,我々が担当するドイツ語の授業で実際に使いながら,その効果を考察して,以下のことを確証した。 まずドイツ語の総合成績優秀者の方が概して聞き取りの成績がよいことが確かめられた。そして問題の内容を高めると,その聞き取りの差がより顕著に出るようになった。一方同レベルの内容でも,話すスピードがゆっくりの場合は多くの学習者が聞き取れているものの,スピードを高めるにしたがって,総合成績の低い者から順次聞き取れる量が減っていった。総合成績優秀者ほどその減り方が少なく,スピードを高めれば高めるほど,総合成績の低い者との差異が一層顕著になった。 以上の結果を分析し,聞き取れない程度や内容によって,練習問題および試験問題を改良した。すなわち,スピードが速くて聞き取れない場合は,スピードの段階を細かくして,徐々にスピードに慣らしていくと,より多くの者が聞き取れるようになった。それに対してスピードが遅くても聞き取れない総合成績の低い者は,ドイツ語の単語量や文章量が少ないので,まず単語力・文章力を高めるための読解問題や作文問題を中心に総合的なドイツ語力を向上させながら,平行して聞き取り練習をさせた。このように,各学習者の弱点ごとに対応したことにより,以前よりも早く,しかも多くの者の聞き取り能力が向上し,かなりの成果をあげることができた。
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