1.聴解練習教材の開発:初級前半の22課、初級後半の23課、中級後期の16課のスクリプトを用意し、その朗読を吹き込み、CDを4枚作成した。初級の朗読は、ナチュラルスピードに近く、ポーズは不自然にならない範囲でできるかぎり多く入れた。中級後期の朗読は、語の発音は明確だが、速度はあくまでもナチュラルスピードで、ポーズも日本人が聞いて不自然でない程度とした。 2.開発したCD教材を使った試行授業の実施:平成15年度後期と平成16年度前期に初級(9名、11名)、中級後期(14名、23名)の学生にCDを貸し出すだけでなく、クラスで使う活動を盛り込み、聞いてわかることの大切さをも喚起する授業を行った。その結果、学期末のアンケートでは、漢字語彙学習は、読み書きを覚えるだけではなく、別の練習スタイル(例えば、CDを聞きながら、その語に当てはまる漢字を思い浮かべる)があることがわかった、自分の聞き取りの困難な点が分るので特にその点(多くの学生が「濁点」や「長音」に困難を感じている)に気をつけて聞くなどの学生なりの工夫か見られ、また聞きがあると内容理解が容易になると答えた者も多く、漢字語彙学習において音声を導入することの意味にあるという感触を得た。 3.語彙の知識不足の解消:CDを聞くことで明確になったことの一つに絶対的語彙の知識の不足がある。加えて聴き取りが劣るため内容と全く関係のない語彙と混同する。そこで、このCD教材の補助教材として「学習漢字関連語彙」を学ばせる教材を作成し、加えて学習漢字語彙に関してのみ「読みの確認」ができるようにパワーポイントで補助教材も作成した。 4.海外での漢字学習支援:海外での漢字語彙学習、特に米国からの短期留学生に対し、母国で漢字語彙を学ぶ際に、作成したCDを活用できないかという環境調査も行った。音に強い非漢字圏学習者に音と形・意味の関連づけを行うことで、漢字語彙学習をとっつきやすいものにしようという試みである。
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