15年度の本研究は、児童の自己表現の深化を目的としている創造的ワークショップの活動に参加している児童・支援ボランティア・NPO職員間の関係を次に限定して検証していくことを研究目的としている。 ワークショップに参加する児童と、支援ボランティア間の協同的活動を通して、ワークショップで提供するメディア・道具と支援ボランティアの存在が、児童の思考の外在化の対象として機能しており、児童にとってリフレクティブな思考を促す環境であることを明らかにする。そして、児童と支援ボランティア間の協同的活動が児童の自己表現を深化させていくプロセスを明らかにし、その一般的特性を検証する。 本研究で明らかにしたい具体的内容は、次の点であるが、15年度の取り組みを通して次の展開がそれぞれに生まれてきている。 (1)構成型描画ソフトウエアを活用するワークショップでは、児童が製作した絵の完成までのプロセスを紹介する「プロセスの作品化」という場がある。このとき、児童と支援ボランティアが絵の完成までのプロセスで起こった試行錯誤や、こだわりや、作った背景などの心情を聞く場面がある。この場面の会話などを分析することで、支援ボランティアが児童にとってリフレクティブな環境になるための条件については、リフレクションについての分析と構造化、子ども自身の内省の経験と語りについての分析を進めていくことができた。 (2)創造的なワークショップを展開しているNPOで活動する職員は、その社会的使命感は高い。そのNPO職員がデザインしたワークショップに支援ボランティアが参加していく過程で、支援ボランティアは、周辺から参加し、そのコミュニティーの活動を理解して、その意義を認め、多くの時間や意欲を提供していくときに、その人は正統的に周辺参加したと言われている。この正統的周辺参加の過程を参加していく学生などの対象にフィールドワークが始まっている。
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