本研究は、大きく二つの視点から「創造系ワークショップを中軸とした学習共同体形成に関する研究」をまとめている。 1)正統的周辺参加論の視点から見た支援ボランティアの関係性について 正統的周辺参加論についての論考を加えた上で、創造的なワークショップに定期的に参加している支援ボランティアスタッフが、ワークショップの意図の理解やワークショップの実行システムへの慣れに従って、ワークショップ実施の中核メンバーとしての当事者意識が形成されていく過程を記述している。 2)自己理解の深化と共同体形成について 創造的なワークショップでは、参加者の作品制作の過程を可視化していくことと、それを利用して自らの内省する経験をすることを中核にしていき、思考の外在化の可能性を共有している。この参加者の内省を支援するボランティアの支援の方法が、彼らの共同体形成の進度につれて、定型化していくことに着目して、共同体が持つ文化の影響について検証している。その具体的な事例として、有機的な学習共同体としての機能を始めた初期ワークショップの実際や、「Small Fishワークショップ」の実際などの詳細を記述している。 3)創造系ワークショップを中軸とした学習共同体形成に関する課題 上記の2点について研究していくなかで、創造系ワークショップを中軸とした学習共同体形成に関連した課題として、コンピューターによる自己表現に内在されている課題や、メディアアートワークショップに内包された危険性についても論考している。
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