平成15年度はシステムを構築するにあたっての理論的研究とシステムの試作をおこなった。理論的研究としては、進路決定支援ができるようになるための条件を調査から明らかにし、さらにこれまでの進路決定研究および、教授・学習研究、及び意思決定理論とその応用分野である消費者行動の研究について検討した。 まず、進路決定のプロセスについて、事前段階(動機づけ)と進路選択段階、事後段階に分けた。このうち事前の段階では、進路決定ができないのは、進路決定への動機づけの低さが問題であることが調査の結果明らかになった。このことは特に進路決定に対しての関心の程度と進路決定課題の重要性の認識が低いことが進路決定の程度と関連しているということである。 さらにこのことについて理論的研究をおこなった。まず進路指導研究では、この進路に対する関心は進路成熟度研究の中で包括的に扱われてきた。次に教授・学習研究において、学習の動機づけとして課題価値が関連していることが示されている。また一般の意思決定の研究では、どのように課題を認知するかということと情報処理プロセスの仕方が影響しあっていることが示されている。さらにこれを援用した消費者購買行動の研究では、行動の動機づけとして「関与」概念が提唱されている。 これらの研究から、進路決定においても、学生がどのような自己実現についての欲求をもっているのかということと、課題に対する価値を含めてどのように課題を認知しているのかということが、意思課題の重要性、さらにその関心の程度と関連性があることが予想される。これこそが進路決定への動機づけとして重要な概念であると考えられ、この点については今後実験によって明らかにする予定である。 さらに、上記の進路決定の動機づけを高めるために、進路選択肢をいくつか入力し、その価値づけをおこなって、最終的に現時点でどの選択肢の効用が最も高いのかということを表示するような進路決定をシミュレーションするコンピュータシステムを試作した。
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